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胡蝶の夢
第5章 有罪
思えば、私は色んなものを見て見ぬ振りしてきたのでした。
『力及ばないから』それを言い訳にして、現実を直視せずに自分の中に閉じこもったのです。
私の記憶の奥底には沈んでいます。
決して思い出すまいとした現実の数々が…。
「つぅ……」
重く、頭を締め付けられる様な頭痛が襲いました。
思い出したくない。
身体がそう訴えるかの様に。
〝「想世っ…」″
!?
一瞬、兄の背中が見えました。
私の前に立ちはだかる幼き日の小さな背中。
それを乱暴に押し退けようとする大きな手。
〝「想世に触るなっ」″
殴り飛ばされても髪を掴み上げられても何度でも立ちはだかり、兄は優しく私を振り返るのでした。
この記憶は…?
こんな過去、知らない…。
見ていない。
私は見ていない…。
見なくて良いように、記憶の底に沈めたのですから。
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