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胡蝶の夢
第6章  腐蝕 






「花…」



「え?」



「……花言葉を御存知ですか?」



あまりにも唐突。


質問に質問で返されるなんて。


毎日扉の向こうに置いていくあの花にも何か意味なんてあったんだろうか?



「僕は詳しくないのだけれど、何かあるのかい?」



「いえ…」



その掠れて消えてしまいそうな声を最後に、また無言の静寂が降りてきた。


居心地の悪い間延びした時間がぬったりと空間を支配する。


分厚い扉を挟んで向こう側にまだ人の気配を感じるのに、動きもせず話すでもなくただそこにいるだけ。


どんな思いでそこに立っているのだろう。


何を思い、何のためにまだそこに残る?


花を置く役目さえ終えたなら、すぐにでもここから立ち去れば良い。


それなのに。



「君の名前は……?」



本当はどうでも良い、そんなもの。


名前なんて。


でも、手中に入れるにはまず相手を知ることだ。





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