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胡蝶の夢
第6章 腐蝕
恵まれた女の怠慢。
彼女の沈黙にはそんな甘えの塊のようなものを感じて不愉快だ。
そしてもう一つ気付いてしまった。
僕の中の醜い感情。
唯一の妹にさえ嫉妬して妬む気持ちを。
自分の汚さに一層苛立ちは募るばかり。
「名前…、言いたくない?」
「……」
頭の中がぐるぐるする。
何もかもが自由にならない。
僕のしたいようにならない。
なぜだ。
なぜ、その一言さえ言えない?
どうして…?
「…僕に…告げる価値がないから?」
なんて自傷行為。
よっぽどバカだな、僕も。
言った自分が自分で後悔している。
『そうだ』と言われたらどうするつもりだ。
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