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社内の推しメン先輩は、なぜか私のことが好きらしい。
第2章 私は推しが好きすぎる
「……本当にいいの? だってあそこ……」
 ラブホだよ? 口に出さずとも、彼の目がそう訴えているのがわかる。この状況下で先輩がそこまで思い悩む理由───それがわからないほど、私も鈍くはないけれど。
 仮にも同じ職場で働く人が、仕事終わりに後輩をラブホに誘うなんて、恋人でもない限りありえない話だ。就業時間を終えた後だからといって問題がないわけがないし、たとえ相手も任意の上だったとしても、行き過ぎた行為であることは否定できない。
 今はどこの企業も、コンプライアンスに過敏になっている時代。下手に女性社員に手を出して、自らの立場が危うくなる可能性は誰だって避けたいはず。セクハラやパワハラで訴えられたら最後、今まで築き上げてきたキャリアが全て水の泡になってしまう。もちろん先輩に限って、そんな馬鹿げた真似はしないだろうけど。
 それに……先輩だって、私なんかとラブホに行くこと自体、不本意のはず。どうせならもっと、可愛い子や美人さんとプライベートで行きたかったよね。そう考えると、逆にこっちが申し訳ない気持ちになってくる。
「……あの、じゃあ私は漫喫に泊まるので。先輩はホテルの方に泊まってください」
 だから別の提案をしてみるものの、彼はいい顔をしなかった。
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