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社内の推しメン先輩は、なぜか私のことが好きらしい。
第2章 私は推しが好きすぎる
 対して私は然程疲れてもいないし、漫喫には何度か泊まったこともあるから慣れている。多少煩くても、1日くらいなら耐えられると思う。
「……あ」
 ふと空を見上げてみれば、雨の降り方が変わっていることに気づいた。風は変わらず吹き荒れているものの、数分前と違い、その勢いは幾分か弱まっている。店のガラス扉をザアザアと打ち付けていた雨音も、今は静かだ。だから、
「……そんなに嫌……か。俺と一緒にいるのは」
 落胆を滲ませたような囁きが、雨風に乗せられて私の耳に届いた。
「……え」
 独り言のような呟きに思考が止まる。どこをどう捉えたのかは謎だけど、先輩は大きな勘違いをしていた。私の方が、彼とホテルに泊まることを嫌がっていると読み取れる言い方に、慌てて首を振ることで否定の意を示す。
「や、違いますよ。私は別に嫌とかじゃなくて、」
「本当に? 俺と一晩ラブホに泊まっても平気? ひとつのベッド共有することになるけど」
「……え、えっ?」
 露骨な言い回しに焦りが生まれる。オブラートに包むこともせず、先輩は直球で、私に疑念を投げ掛けてきた。
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