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社内の推しメン先輩は、なぜか私のことが好きらしい。
第2章 私は推しが好きすぎる
 漫喫に泊まるのは慣れている私だけど、平日の夜に寝泊まりすることはほとんど無い。数冊分の漫画を読み終えた後の余韻や疲労感、または寝不足を抱えたまま、翌日の仕事をこなしたくないからだ。そして漫喫という場所が、充分な睡眠を確保しづらい場であることも事実。
 だから先輩の主張は最もな意見で、私の身を案じてくれているのも、痛いほどに伝わってきた。
「俺は先輩だから、後輩が仕事に支障が出かねない事をしようものなら止めなきゃいけない。言い方キツかったらごめんね」
「……いえ。私の方こそ、ワガママ言ってすみませんでした」
「ううん、大丈夫だよ。椎名さんは俺の……」
「……?」
「……大事な、後輩だから。椎名さんが無茶しそうな時は、俺が止めてあげないとね」
 茶目っ気たっぷりに微笑まれて、ぽんと頭に手を置かれる。ただそれだけの事で嬉しくなる。じんわりと温かな感情が、心の隅々まで満たしてくれる。胸に染み入る言葉とは、きっと先輩がくれた言葉のことを言うんだろう。
 松永先輩のこういうところが、とても好きだなあと常々思う。優しくて、気遣いも上手で、私の言い分を頭ごなしに否定しないで聞いてくれるところ。それでいて、駄目なところは駄目だと叱ってくれるところ。
 うっすらと抱き始めていた、彼に対しての不信感が消えていく。こんなに後輩の身を案じてくれる人が、変な過ちを起こすわけがないよね。
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