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社内の推しメン先輩は、なぜか私のことが好きらしい。
第3章 今更気付いてももう遅い
 ここはラブホ街じゃないし、父親が迎えに来てくれたとしても怪しまれることはない(と思いたい)。身内とはいえ、こんな真夜中に父を呼び出すのは気が引けるけど……でも車さえあれば、先輩を自宅まで送ってあげられたのに。どうしてこの結論に辿り着けなかったんだろう。後悔先に立たずとはこの事だ。
 そう、時すでに遅しだ。私達はラブホに来てしまった。前精算が必須のラブホ料金は、既に先輩が支払い済みだ。
 だから今更、迎えなんて呼べるはずがない。帰る手段があるなら支払う前に言えと、先輩からそう責められるのが目に見えている。
 それに、23歳にもなって父親に来てもらうというのも、親離れが出来ていない子供のように思えて恥ずかしい。
「……もう、戻らなきゃ」
 後に控えている先輩の為にも、このままバスルームを占領し続けるわけにもいかない。挫けそうになる心を奮い立たせ、私は重い腰を上げた。
 のろのろとした足取りでバスルームを出る。ヒヤリとした空気に身震いし、慌ててバスタオルを手に取った。
 全身をくまなく拭いている最中、ふと洗面鏡に目を見やる。鏡の中に映る自分の姿は、自己評価をするならば平均並、またはそれ以下といったところか。間違いなく、周囲から見て目を惹くような外見はしていない。
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