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社内の推しメン先輩は、なぜか私のことが好きらしい。
第3章 今更気付いてももう遅い
 鼻筋通ったメリハリのある美人顔とか、黒目がちな瞳が特徴のベビーフェイスとか、いわゆる可愛いとか美人に形容されるような顔には、残念ながら恵まれなかった。母親譲りのぱっちり二重だけが唯一好きな部分ではあるものの、メイク次第で二重は簡単に作れてしまうから、胸張って自慢するほどの特別感はない。
 スタイルも至って普通、悪いわけじゃないけど特別良いというわけでもない。良く言えば平凡、悪く言えば地味。RPGで言えば村人AとかBあたり。誰の目にも留まることがない薄い存在感、それが私。松永先輩とはまるで対極だ。
 ……いや、先輩と比べること自体おこがましいけれど。
「あー、やめた」
 自虐的になったところで状況が変わるわけじゃない。悩んだどころで引き返せないなら、もう腹を括るしかない。一抹の不安はあれど、先輩なら不誠実なことをしないだろうと思いつつ、ふと自分の姿を見直した時。新たな問題に直面した。
「……バスローブ……着たくないなあ」
 すっかり濡れてしまった服は、ハンガーにかけて乾かしている最中だ。バスタオル姿で戻るわけにもいかないし、バスローブを着るしか選択肢はないんだけど……なんか、生々しくて嫌だ。
 だって、普段からバスローブを着る習慣なんてない。こんな所に来た時じゃないと、着る機会は早々ない。だから余計に嫌だった。此処がラブホだということを強く意識してしまうから。
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