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社内の推しメン先輩は、なぜか私のことが好きらしい。
第3章 今更気付いてももう遅い
 お風呂上がりの濡れた身体に、直接バスローブを羽織る勇気はさすがにない。しっかりと身体を拭いて、下着だけは身に着ける。その後に手に取ったそれは、厚手のタオル地で出来ていて肌には全く馴染まない。多少の不快感を伴いつつ、先輩が待つ部屋へと足を向けた。
 控えめにドアを開けてみる。部屋の真ん中に鎮座しているダブルベッドに、緩く足を組みながら腰掛けている先輩の姿がある。ジャケットはいつの間にか脱いでいたようで、白無地のシャツが、彼の爽やかな印象を際立たせている。手元にはフードメニュー表らしきものが見えるから、もしかしたらお酒が飲みたいのかもしれない。
 捲られた袖口から覗く腕は、普段はシャツに隠れて露出しない部分だ。筋肉と血管の筋が浮く腕にときめきを感じてしまうのは、きっと私だけじゃないはず。あの逞しい腕に、どれだけの女の人が抱かれてきたのかなあ……なんて考えが浮かんで、すぐに頭を振って煩悩を追い払った。
「先輩、お先にありがとうございました!」
 心に巣くう不安が片付かないまま、それでも態度には出さないように笑いかける。平常を装う私の呼び掛けに反応して、先輩はゆっくりと顔を上げた。その場から立ち上がり、サイドテーブルにメニュー表を置く。
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