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社内の推しメン先輩は、なぜか私のことが好きらしい。
第3章 今更気付いてももう遅い
「───ええ? りっちゃん、タワマンに住んでんの!? りっちゃんの実家ってお金持ち!?」
 鳥串を片手に雄叫びを上げたのは、松永先輩と同期で同僚の村山先輩。彼の一言で、周りからどよめきの声が上がる。
「い、いやあの、別に上の階に住んでるわけじゃないので……」
「いやいや! 都心部のタワマン住民なんて、みんな人生の勝ち組みたいなもんでしょ!」
 興奮さめやらぬ様子で村山先輩が捲し立てる。この人も間違いなくイケメンの部類に入るんだろうけど、なんせ、この通りフレンドリーが過ぎる。
 賑やかな人は嫌いじゃないけど、ここまで距離感を詰められると逆に引いてしまう。異動初日からあだ名で呼ばれるなんて思わなかったし、まだ親しくもない男の人から『りっちゃん』なんて呼ばれるのは、やっぱり違和感しかなかった。
 でも、相手はこれからお世話になる先輩。私が早くチームに馴染めるように、村山先輩なりに距離を縮めようとしてくれているのはわかる。だから『呼び名を戻してほしい』なんて言えなかった。村山先輩の気遣いを無下にしてしまう気がして。
 けれど───苦笑いを浮かべるしかない私の心情を、松永先輩はいち早く気づいてくれた。
「村山、ちょっと声抑えて。あと名前。あだ名で呼びたいなら、事前に本人に確認取りなよ。いきなり下の名前で呼ばれたら、椎名さんもビックリするでしょ」
「え……ごめん俺、馴れ馴れしかった……?」
 松永先輩に諭されたことで不安になったのか、村山先輩はおどおどした声で尋ねてきた。
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