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社内の推しメン先輩は、なぜか私のことが好きらしい。
第3章 今更気付いてももう遅い
 店を出た後、人目のつかない場所を探して路地裏に回る。細い通路を真っ直ぐ進めば、こじんまりとした古い広場に辿り着いた。錆びついたブランコと滑り台は、今にも崩れ落ちてしまいそうなほど腐敗している。ずっと昔に放置された公園なのだろう、人が訪れた気配も足跡も無かった。
 ネオンの光も届かない路地の奥まったところに、こんな場所があるなんて驚きだ。まるで秘密基地を見つけてしまったみたいで気分が高揚する。
 私は昔から探検もどきが大好きで、風情ある路地や小道を見つけたら、つい足を向けてしまう。そのお陰で、隠れ家的なカフェやバーを見つけることもしばしばあった。
 此処はカフェではないけれど、小休憩する場には最適かもしれない。こんな奥地に誰も来ないだろうと考えて、古いベンチの背に寄りかかった。
 ひんやりとした夜風が髪を揺らし、火照った頬を優しく撫でる。徐々に熱が引いていく感覚に身を任せていたとき、
「───椎名さん」
 不意に名前を呼ばれてどきっとした。聞き慣れない低温の声に心臓が早鐘を打つ。けれど声の主が現れたとき、見知った人物だと気付いて力が抜けた。
「……松永先輩?」
「……やっぱり"此処"にいた。どう? 少しは酔い覚めた?」
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