この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
社内の推しメン先輩は、なぜか私のことが好きらしい。
第3章 今更気付いてももう遅い
「先輩、よく此処がわかりましたね」
「ああ、うん。椎名さんの姿はなかったけど、近くにはいるだろうと思って探してたら、たまたまこの路地を見つけたから。もしかして、って思って来たけど正解だったね」
何でもない事のように先輩は言うけれど、どこに居るのかもわからない人を探すために、わざわざ路地裏に回ってまで追いかけてくるなんて普通のことなんだろうか。私だったら、夜も更けたこんな時間に、暗がりな路地に入ってまで人探しをしようなんて思わないけれど……。
でも先輩には先輩の考えがあるし、そこは私がとやかく言う権利はない。真相は謎だけど深堀りする気もなくて、手渡されたコートを素直に羽織った。
その時、ふと周囲が明るくなる。雲に隠れていた月が顔を出し、公園に咲き誇る花のひとつひとつに冷たい光を灯す。そっと彼を盗み見れば、古ぼけた公園を物珍しそうに眺めている先輩の横顔も、月明かりに照らされてとても綺麗だった。
───……この人が松永圭さん、なんだ。
広報部にいた時から彼の話はよく耳に入っていた。営業成績は常に優秀、女性社員からは注目の的。後輩からも慕われていて、上司からも一目置かれている存在。悪い噂なんてひとつも立たない。今まで関わることもなかったし、話すどころか手の届かない人だと思っていた先輩が、今、私の隣にいて会話を交わしているなんて。
「ああ、うん。椎名さんの姿はなかったけど、近くにはいるだろうと思って探してたら、たまたまこの路地を見つけたから。もしかして、って思って来たけど正解だったね」
何でもない事のように先輩は言うけれど、どこに居るのかもわからない人を探すために、わざわざ路地裏に回ってまで追いかけてくるなんて普通のことなんだろうか。私だったら、夜も更けたこんな時間に、暗がりな路地に入ってまで人探しをしようなんて思わないけれど……。
でも先輩には先輩の考えがあるし、そこは私がとやかく言う権利はない。真相は謎だけど深堀りする気もなくて、手渡されたコートを素直に羽織った。
その時、ふと周囲が明るくなる。雲に隠れていた月が顔を出し、公園に咲き誇る花のひとつひとつに冷たい光を灯す。そっと彼を盗み見れば、古ぼけた公園を物珍しそうに眺めている先輩の横顔も、月明かりに照らされてとても綺麗だった。
───……この人が松永圭さん、なんだ。
広報部にいた時から彼の話はよく耳に入っていた。営業成績は常に優秀、女性社員からは注目の的。後輩からも慕われていて、上司からも一目置かれている存在。悪い噂なんてひとつも立たない。今まで関わることもなかったし、話すどころか手の届かない人だと思っていた先輩が、今、私の隣にいて会話を交わしているなんて。