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社内の推しメン先輩は、なぜか私のことが好きらしい。
第3章 今更気付いてももう遅い
 核心を突いた答えに息が止まる。私は元々嘘をつくのが下手だし、顔や態度に出やすいタイプだと思ってるけど、だからって、ここまで深く胸の内を読まれるなんて思わなかった。下手な虚勢を張っても、この人の前では全部無駄な気さえしてくる。
「……すごい、ですね。先輩はエスパーなんですか?」
「いや、ただの社畜」
「……ぷっ、あはは。社畜いいですね」
 苦い笑みを頬に残し、足下に視線を落とす。人は誰もが"自分の話を聞いてほしい、自分を理解してほしい"という欲求を持っている。例にもれず私もそのうちの1人だった、ということ。
 どれだけ我慢していても、強がっていても、本当は弱音を吐き出せる場所や誰かを望んでいたんだ。だから今、松永先輩の前で弱い自分を曝け出したとき、胸のつかえが取れたようにほっとしてしまったんだ。
「……父が好きな言葉があるんです」
「?」
「人事を尽くして天命を待つ……って、意味知ってます?」
「出来うる限りの力を出しきったら、後は運命に任せる心境の例えだね」
「はい。周りは私を羨むけれど、父親が死ぬほど努力してきたから、今の裕福な暮らしがあるだけなんです。父は今金融に転職したけど、全国転勤ありの職種だから、基本給も家賃手当もすごく高くて。それだって、努力していなければ辿り着けなかったことだから。父が成し得たことはすごいと思うけど、エリートでも何でもなくて、普通の会社員です。母も普通の主婦だし、私達は一般家庭と何も変わりません」
「うん」
「……でも、内心はそう思っても口には出せなくて。タワマン住民の私が何を言ったところで、周りには嫌味にしか聞こえないから。それでも恵まれてるじゃんって噛みついてくる人もいたし、努力が全部報われるわけじゃないって、反論してくる人もいたし」
「………」
「お金持ちは妬まれるんです。……もう知ってますから」
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