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社内の推しメン先輩は、なぜか私のことが好きらしい。
第3章 今更気付いてももう遅い
 先輩はそう言うけれど、一方的に話を完結させられても納得できるはずがない。けれど村山先輩はこの場に居ないし、私に彼氏がいる説を松永先輩に伝えた理由も謎のまま。
 このままうやむやにしてはいけない気がするし、明日本人に直接問い質さないと……なんて決意を固めている私の隣で、
「……でも……そうなんだ。彼氏いないのか……」
 自らを説得させるように繰り返された呟きは、深い意味を含んでいるようにも聞こえた。
「……村山先輩、なんでそんな嘘ついたのかな……」
「さあ……村山だからね……」
 釈然としないまま、先輩は答えにならない答えを返す。歓迎会の夜、親しげに接してくる村山先輩に苦手意識を抱いていた私だけど、半年経った今となっては、何でも気軽に相談できる大好きな先輩の一人だ。
 ムードメーカー担当でもある村山先輩は、裏表のない性格でさっぱりとした明るい人。情にも厚く仲間思いで、人のあらぬ噂を面白おかしく広めたりなんて絶対しない。松永先輩とは違う種類の存在感を放つ人。「モテない」なんて藤堂さんは言ってたけれど、そんなことは全然なく、話し上手で弄られ上手な彼に惹かれる人は多い。
 そんな人だから、悪意があって嘘をついた訳じゃないと思いたいけど……どうなんだろう。村山先輩、お調子者だから。
「……でも、誤解が解けたようで良かったです」
 誰だって、好きな人に変な誤解はされたくない。彼氏がいると思われていたことも、"彼氏がいながら他の男とラブホに来るような女"だと思われていたことも。
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