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社内の推しメン先輩は、なぜか私のことが好きらしい。
第3章 今更気付いてももう遅い
「いいから。椎名さんはもう寝て」
「だ、だめです。それは下っ端の私がやらないと」
「……俺、別に椎名さんのこと、下っ端だと思ってないから」
 チームでしょ、そう言って先輩は笑う。
「そもそも、見積書は後輩がやらなきゃいけないなんてルールはないからね。俺がやっても問題ない」
「でもっ」
「それに俺がやった方がすぐ終わるし」
「うっ……」
 そこを指摘されると何も反論できない。お世辞にも私は要領がいいとは言えないから。
「……椎名さんは、一人で何でもやろうとし過ぎ。頑張るのはいいことだけど、頑張りすぎは体に毒だよ」
「………」
「たまには先輩に頼りなさい。言ったでしょ、椎名さんが無茶しそうな時は俺が止めるって」
 ……確かに言われた。言われたけど、無茶なんてしていないのに。そんなに必死感が出ているのかと思うと複雑な気持ちになる。
 けれど、先輩の気遣いを無下にもしたくない。
 だから素直に従うことにした。
「……あの、じゃあお言葉に甘えます。すみません、ありがとうございます」
「いえいえ。一応6時にアラーム設定しておいたけど大丈夫?」
「……はい」
 それきり先輩は何も喋らなくなって、私も大人しく口を閉ざす。静寂が戻った空間に鳴り響くタイピング音は、不思議と眠気を誘うような心地よさを伝えてくれる。
「……先輩、あのね」
「なに?」
「おやすみなさい」
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