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社内の推しメン先輩は、なぜか私のことが好きらしい。
第2章 私は推しが好きすぎる
 それもそのはず。キリッとした凛々しい眉とシャープな顎は男性的だけど、形のいい唇は逆に小さくて女性的。垂れ目がちな瞳は甘く優しげな印象を与え、まさにビタースイートと呼べる、特徴的な顔の持ち主。文句なしに格好いいし、私が今まで出会った異性の中で一番好きなお顔立ち。ぶっちぎりで大優勝だ。
 身長も高くて姿勢がいいから、立ち姿だけでも綺麗に見える。物腰も柔らかく言葉遣いも丁寧で、清潔感もバッチリ。営業社員という観点を抜きにしても、女からモテる要素を全て揃えたような人。そんな人から何の混じり気のない明るい笑顔を向けられたら、胸がときめかないはずがなかった。
 喜びを頬に漲らせる私をよそに、先輩は目元にかかる前髪を緩くかきあげた。「どうしようかな」と力なく呟く彼の、その横顔をそっと盗み見る。
 艶っぽく印象的な黒髪が雨に濡れ、しっとりと潤う頬にぺたりと張り付いている。その一部をうっとおしそうに払う仕草も様になっていて、無意識に目を奪われた。
 雨も滴るいい男な上に、2つボタンまで開けられたシャツから覗く鎖骨が、大人の色気を匂わせている。ただならぬフェロモンを放っていることを、はたしてこの人は自覚しているんだろうか。
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