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それが運命の恋ならば
第4章 闖入者
数日後、凪子は、漸く雄大へ手紙を書く気持ちになった。
…京都を出て、ひと月近く経ったのに、まだなんの連絡もしていなかったのだ。
凪子はスマートフォンも持っていないから、こちらから雄大に連絡しないことには元気かどうか、無事に過ごしているかも分からないのだ。

…雄ちゃん、きっとすごく心配しているわね…。

凪子は私室の文机に向かい、手紙を書いた。
文箱には古風な和紙の便箋と封筒が用意されていた。
凪子が尼寺に文を出すかも…と李人が配慮したのかもしれない。

『…雄ちゃん。
ずっと連絡しなくてごめんなさい。
私は無事に一之瀬家に嫁ぎ、元気に過ごしています。
安心して下さいね。
李人様はとても優しくて立派な方です。
私のために家庭教師も雇って下さり、勉学のチャンスを与えて下さいました。
私は李人様に大切にされています。
李人様の弟さんも私にとても親切にしてくれます。
一之瀬家には仕える方々が沢山いらっしゃるけれど、皆さん良い人ばかりです。
…だから、雄ちゃん…。
私のことはもう心配しないでね。
私は大丈夫です。
今まで、本当にありがとう。
雄ちゃんは雄ちゃんの人生を大切にして下さい。
大学生活を思い切り楽しんで下さい。
…心から、雄ちゃんの幸せを祈っています』

…そう締めくくり、封をした。
雄大の明るく凛々しい貌が胸に浮かんだ。
少しだけ、ちくりと胸の奥が痛んだ。

…嘘は書いてないわ…。
李人様は…お優しいもの…。
自分の出生の秘密は書けなかった。
自分が高遠当主の落胤だと、もし知らせたら驚くに違いない。
…高遠当主と、李人の母との因縁も…。
書けばきっとまた心配する。

…本当のことを言わないのは、嘘じゃないわ…。
自分にそう言い聞かせ、凪子はトキに手紙を出して貰おうと、部屋を出た。
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