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それが運命の恋ならば
第4章 闖入者
「…凪子さん」
部屋を出て廊下を曲がった目の前に、不意に李人が現れた。
上質な黒に近いグレーのスーツ姿は一部の隙もない。
きちんと撫でつけられた黒髪が艶やかだ。
経営している旅館から一度帰宅したのかもしれない。

「李人様…!」
驚く凪子の白い手に握られた手紙に視線を走らせる。
「お手紙ですか?」
「…は、はい…」
李人の手入れの行き届いた美しい手が差し出された。
「…私が出しておきましょう。
丁度旅館に郵便局員が来るところです」

断る理由は何もない。
「…あ…ありがとうございます…」
礼を言い、頭を下げる。

「…お友だちですか?」
宛名の名前に眼を遣り、尋ねられる。

「…はい。幼馴染です。
…私のことをとても心配してくれていて…」
凪子の説明に、李人はにっこりと笑った。
「そうですか。
…では一度、お友だちにこちらに遊びに来ていただくようお誘いなさい。
凪子さんの様子を見たら安心されるでしょう」

「…いいのですか?」
「もちろん。
他にもお誘いしたい方がいらしたらご遠慮なくどうぞ。
…ああ、まだ披露宴もしていなかったですね。
良い機会です。
お披露目のパーティーをしましょう。
京都のお友だちをたくさんお呼びして…」

凪子は慌て首を振る。
「いいえ、いいんです。
…私、仲の良いお友だちもいませんでしたから…。
尼寺で育った孤児なんて…みんな、遠巻きにしていました。
…雄ちゃん…あの…この友だちだけなんです。
私と仲良くしてくれて、私を庇ってくれたのは…。
…だから、雄ちゃんは恩人なんです」

気がつくと、李人の切長の美しい眼差しがじっと凪子を見下ろしていた。

「…そうですか…」
李人の手がゆっくりと挙げられ、凪子の髪を静かに撫でた。

「…貴女に優しい幼馴染がいて、本当に良かった…」
…それは、驚くほどに優しく温かい声と手つきだった。

「…李人様…」
凪子の声にはっと我に帰ったように、李人はその手を引っ込めた。
そうして、やや苦しげに端正な眉を寄せると、凪子に背を向けた。

「…それでは手紙は出しておきます。
今夜は旅館に詰めますので、貴女は先に寝んでいて下さい」
そう言い捨てると、李人は足早に去って行ったのだった。

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