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それが運命の恋ならば
第4章 闖入者
「…これ…」
李人に手渡された真新しいスマートフォンを、凪子はこわごわと見つめた。
…明るい陽光が差し込む朝食室。
トキは食後の煎茶を淹れると、無表情のまま部屋を辞した。
「貴女のスマートフォンですよ」
熱い煎茶を美しい所作で飲みながら、淡々と答える。
「持ってないと何かと不自由でしょう」
「…いいのですか?」
…まさか、貰えるとは思ってもみなかったのだ。
「アドレスは勝手ながら私が設定しました。
これがそうです。
それから電話番号は…これです」
李人の美しい手が器用に画面操作をする。
「…ネットの使い方やアプリの入れ方は桃馬に教わると良いでしょう。
こういう新しい端末は私などより若い子の方が断然詳しいですからね」
微かな微笑みに戯けた色が浮かんでいた。
凪子の胸が李人への感謝で一杯になる。
「ありがとうございます…!
私…携帯電話を持つの、初めてです。
…すごく…嬉しいです…!」
声を弾ませる凪子を、李人は一瞬眩しげに見つめ…けれど直ぐにしなやかに立ち上がった。
「そうですか。
…では、仕事に行ってまいります。
今夜も遅くなりますから、先にお寝みなさい」
凪子の貌を見ようともせず、李人はさっさと背を向け、朝食室を後にしようとする。
凪子は慌てて立ち上がり、声をかけた。
「行ってらっしゃいませ。
…あの…お気をつけて…」
ドアノブに掛かった手が一瞬止まり、振り返る。
眼が合った刹那、感情を抑えた…けれどどこか照れたような声が返ってきた。
「…行ってきます」
ドアが閉まる音を聞きながら、凪子は貰ったばかりのスマートフォンを大切そうに握りしめた。
…そして…
「…行ってらっしゃいませ…」
…小さく呟き、そっと微笑んだのだ。
李人に手渡された真新しいスマートフォンを、凪子はこわごわと見つめた。
…明るい陽光が差し込む朝食室。
トキは食後の煎茶を淹れると、無表情のまま部屋を辞した。
「貴女のスマートフォンですよ」
熱い煎茶を美しい所作で飲みながら、淡々と答える。
「持ってないと何かと不自由でしょう」
「…いいのですか?」
…まさか、貰えるとは思ってもみなかったのだ。
「アドレスは勝手ながら私が設定しました。
これがそうです。
それから電話番号は…これです」
李人の美しい手が器用に画面操作をする。
「…ネットの使い方やアプリの入れ方は桃馬に教わると良いでしょう。
こういう新しい端末は私などより若い子の方が断然詳しいですからね」
微かな微笑みに戯けた色が浮かんでいた。
凪子の胸が李人への感謝で一杯になる。
「ありがとうございます…!
私…携帯電話を持つの、初めてです。
…すごく…嬉しいです…!」
声を弾ませる凪子を、李人は一瞬眩しげに見つめ…けれど直ぐにしなやかに立ち上がった。
「そうですか。
…では、仕事に行ってまいります。
今夜も遅くなりますから、先にお寝みなさい」
凪子の貌を見ようともせず、李人はさっさと背を向け、朝食室を後にしようとする。
凪子は慌てて立ち上がり、声をかけた。
「行ってらっしゃいませ。
…あの…お気をつけて…」
ドアノブに掛かった手が一瞬止まり、振り返る。
眼が合った刹那、感情を抑えた…けれどどこか照れたような声が返ってきた。
「…行ってきます」
ドアが閉まる音を聞きながら、凪子は貰ったばかりのスマートフォンを大切そうに握りしめた。
…そして…
「…行ってらっしゃいませ…」
…小さく呟き、そっと微笑んだのだ。