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それが運命の恋ならば
第4章 闖入者
李人の端麗な横貌が、苦しげに歪んだ。

「…ねえ、一之瀬先輩。
あんたは可哀想なひとだね。
愛するひとへの愛し方が分からない。
他人とセックスさせることでしか愛を計れない。
僕とセックスする恋人を見て、あんたは欲情したんだろう?
それがないと彼女たちに価値はなかったんだろう?
…そんな歪んで狂った愛なんて、女が着いてこられる訳がない。
あんたに放り出された女は皆、傷つき、泣きながら去って行ったよ。
自分のところに戻らない恋人たちを、あんたは追おうともしなかったね。
…次々に、まるで飽きた靴を変えるみたいにあっさりと新しく美しい靴に履き替えた。
捨てられた靴のことなんか、微塵も気に留めなかっただろうね。
そして、新しい美しい恋人を一通り味わったら、惜しげもなく僕に与える。
…ねえ、一之瀬先輩。
あんたは何がしたいの?
何が欲しいの?」
「…黙れ…」
「歪な退廃的なセックス?
自分の恋人が他の男に抱かれるのを見て本当に感じたの?」
「…黙れ…!」
「…そうじゃない。
あんたは、女を信じてないんだ。
女を憎んでいるんだ。
…いや、恐れているんだ。
だからあんたは…」
「黙れと言っているのが分からないのか!」
再び胸ぐらを掴み、激しく殴りかかる。
何度も何度も。
それは、鬼気迫るような表情と、動作であった。

「旦那様!いけません!」
部屋に飛び込んできた禅が、李人の腕を止める。

ふらふらになりながら、間宮は愉快そうに笑った。
「こんなに殴られたのは高校の時、歌舞伎町でヤクザの女に手を出して以来だな」

そうして、口の端の血を指先で拭いながら、しみじみとした口調で告げた。

「一之瀬先輩。
いい加減、気づいた方がいい。
…あんたの一番大切なものを、本当に失う前にね…」

間宮は李人越しに凪子を見遣り、ほんの少しだけ、泣き笑いの表情を浮かべ、眼を細めたのだ。


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