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それが運命の恋ならば
第4章 闖入者
「こちらにお越しください。
傷のお手当をいたします」
禅が間宮を別室に促した。

「奥様を手籠にしようとした男にご親切にお手当か。
さすがは躾の良い庭師だ」
皮肉ぽく笑う間宮に
「このことが露見すれば貴方様のお立場とお父上の外聞にも響くことを決してお忘れなきように」
低い声で釘を刺し、間宮を黙らせた。

二人が部屋を後にすると、凪子は緊張の糸が切れたかのように床に崩れ落ちた。

「凪子…!」
李人が掬い上げ、きつく抱きしめる。
…李人の身体は、微かに震えていた。
「…すまなかった…!
私のせいで…貴女にこんなに怖いをさせて…」
聞いたことのないような苦しげで悲痛な声だった。
「…李人様…」
引き締まった温かい胸に抱かれ、安堵感から涙が溢れ出した。
「…私…私…怖かった…。
…李人様以外のひとに…身体を…奪われたら…て…。
怖くて…怖くて…」
掠れた声で掻き口説く。

李人が静かに身体を離し、凪子の白い頰に流れる涙をそっと拭う。
「…貴女というひとは…。
…私が、貴女にあんなに酷い仕打ちをしているのに…なぜ…」
李人の端正な眉が、苦しげに寄せられる。

「…だって…私は…李人様が…」

…好き…の言葉は李人の唇に吸い込まれ、やがて熱い舌の上で溶かされ、形を為さなかった…。

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