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それが運命の恋ならば
第5章 真実の口
現れたのは、いつもの庭師の黒い作業服ではなく、洗い晒しのインディゴブルーのシャツにブラックジーンズ姿の禅であった。
普段きちりと束ねられている漆黒の黒髪は無造作に解かれ、肩に掛かっている。
李人とは真逆の野性味溢れた魅力が滲み出ている姿だ。
禅は店内を見渡し、凪子に気づくと柔らかな笑みを浮かべ、目礼した。
その眼差しが優しくて、一瞬どきりと胸が高鳴る。
「禅さあん!」
ケンがぴょんぴょん跳ねるように禅に走り寄る。
「トマトが枯れたとメールをいただいたので、様子を見に来ました」
「いやあ〜ん!わざわざ来てくれたの?嬉しい〜!
ありがとね!禅さん」
うっとりしたように禅を見上げるケンに優しく微笑む。
「今日は休みですから。
近くに用事もあったので…。
…どれですか?そのトマトは」
ケンが窓辺のプランターに禅をいざなう。
出窓に置かれているのはバジルやミントなど様々なプランターだ。
どうやらケンはベランダガーデナーらしい。
「これなの。フルーツミニトマト。
可愛いし色も綺麗だから買ったんだけど、すぐ枯れてきちゃって…。
病気かしら?」
禅がプランターの土や葉に触れて見て、すぐに答えた。
「…ああ、これは水のやり過ぎですね」
「水のやり過ぎ?」
「ええ。
トマトは元々アンデスのように雨量が少ないところが原産です。
だから水をやり過ぎると枯れてしまうんですよ」
「そうなの?」
「だから水は一日一回、陽が当たっている日中に土が湿る程度で充分です。
過保護にしない方が甘いトマトが実りますよ」
ケンが唸る。
「禅さんて、農作物にも詳しいのねえ」
「イギリスのプロガーデナーは家庭菜園の技術や知識もないといけないんです。
あちらで叩き込まれましたからね」
「…ステキ…惚れてしまいそう…」
うっとりとした眼差しはまさに乙女のそれだ。
桃馬が茶々を入れる。
「ケンちゃんは男前なら誰でもいいんだな。
さっきまでリーくんリーくん言ってたのにさ」
「うるさいわね!バカボン!」
桃馬を睨みつけ、禅には極上の笑顔を作ってみせた。
「禅さん!コーヒー飲んでいらして。
今、とびきり美味しいのを淹れるから」
普段きちりと束ねられている漆黒の黒髪は無造作に解かれ、肩に掛かっている。
李人とは真逆の野性味溢れた魅力が滲み出ている姿だ。
禅は店内を見渡し、凪子に気づくと柔らかな笑みを浮かべ、目礼した。
その眼差しが優しくて、一瞬どきりと胸が高鳴る。
「禅さあん!」
ケンがぴょんぴょん跳ねるように禅に走り寄る。
「トマトが枯れたとメールをいただいたので、様子を見に来ました」
「いやあ〜ん!わざわざ来てくれたの?嬉しい〜!
ありがとね!禅さん」
うっとりしたように禅を見上げるケンに優しく微笑む。
「今日は休みですから。
近くに用事もあったので…。
…どれですか?そのトマトは」
ケンが窓辺のプランターに禅をいざなう。
出窓に置かれているのはバジルやミントなど様々なプランターだ。
どうやらケンはベランダガーデナーらしい。
「これなの。フルーツミニトマト。
可愛いし色も綺麗だから買ったんだけど、すぐ枯れてきちゃって…。
病気かしら?」
禅がプランターの土や葉に触れて見て、すぐに答えた。
「…ああ、これは水のやり過ぎですね」
「水のやり過ぎ?」
「ええ。
トマトは元々アンデスのように雨量が少ないところが原産です。
だから水をやり過ぎると枯れてしまうんですよ」
「そうなの?」
「だから水は一日一回、陽が当たっている日中に土が湿る程度で充分です。
過保護にしない方が甘いトマトが実りますよ」
ケンが唸る。
「禅さんて、農作物にも詳しいのねえ」
「イギリスのプロガーデナーは家庭菜園の技術や知識もないといけないんです。
あちらで叩き込まれましたからね」
「…ステキ…惚れてしまいそう…」
うっとりとした眼差しはまさに乙女のそれだ。
桃馬が茶々を入れる。
「ケンちゃんは男前なら誰でもいいんだな。
さっきまでリーくんリーくん言ってたのにさ」
「うるさいわね!バカボン!」
桃馬を睨みつけ、禅には極上の笑顔を作ってみせた。
「禅さん!コーヒー飲んでいらして。
今、とびきり美味しいのを淹れるから」