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それが運命の恋ならば
第5章 真実の口
五月の風に髪が乱れたので、凪子はトキに化粧などを整え直してもらったのち、ゆっくりと庭園に戻った。

…披露宴は、色とりどりの薔薇が美しく咲き誇る中庭で行われた。
表の庭園は純日本庭園だが、中庭はこじんまりとしてはいるが、様々な薔薇が咲き乱れるローズガーデンであった。

李人の友人や会社の関係者たちの前でのお披露目の時間は滞りなく済み、今は和やかな立食パーティのときとなっている。
ケンがマイクを握り、賑やかにパーティーの司会を取り仕切っていた。
…というよりも…
「リーくん!アタシからのお祝いの歌を送りま〜す!
越路吹雪の「愛の讃歌」で〜す!」
と、熱唱をしたのだ。
「リーくん!リーくんが結婚しても!アタシの愛は永遠に不滅よおお〜」
李人は嫌がりもせずに、友人たちに囲まれながらにこやかに手を振っている。
意外なことに、来客たちの受けは上々だ。
…ケンはどこでも陽気に楽しく座を盛り上げる才能があるらしい。

雄大は桃馬と意気投合して、楽しげに話している。
その様子を少し離れた場所から微笑ましく見つめていると、背後からそっと声がかかった。

「…奥様…」
振り返る先には、黒い燕尾服の正装姿の禅が佇んでいた。

「…禅さん…」
禅の正装姿は初めて見る。
背が高く、胸板の厚い禅は燕尾服がよく似合っていた。
そのエキゾチックな容貌も相まって、まるでヨーロッパの紳士のようだ。
…思わず見惚れ…そんな自分が恥ずかしくなり、ややぎこちなく笑いかける。
「…綺麗な薔薇ですわね。
私、こんなにたくさんの薔薇の花を、初めて見ました」

禅がゆっくりと近づく。
近くの薔薇に手をやり、穏やかに口を開く。
「…亡くなられた李人様のお母様のローズガーデンなのです。
李人様は何よりもこの薔薇を大切にされておられます。
…だからこちらで、披露宴を開かれたかったのでしょう」

一輪の薔薇を器用に手折り棘を慎重に抜くと、凪子の髪に優しく挿した。
「…あ…」
…先ほど、李人にも飾ってもらったから、これで花は二つとなった。
甘く、切ない薔薇の薫りが凪子に纏わりつく。

「…コンテ・ドゥ・シャンボール…。
私が一番好きな薔薇です…」

…お美しい…。よくお似合いだ…。

吐息混じりの声は熱く、凪子を見つめるその深い夜の海の瞳は、いつにも増して情熱の色を秘めていた。

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