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それが運命の恋ならば
第5章 真実の口
「…なぜいとは、そのようなことを知っている?
お前は私が生まれてからこちらに来たのではないか?」
感情を押し殺した無機質な声で李人が尋ねる。

「…私の父は長年、雪乃様のご実家の庭師をしておりました。
そのご縁で、雪乃様にこちらに呼んでいただいたのです。
ですから、雪乃様のお嬢様時代から存じ上げているのです」

庭師の単語に、凪子は禅を見上げる。
禅は労るような見守るような…やや切ない熱を帯びた色の視線を返してきた。

「…雪乃様は泰彦様とお別れになったのち、五年後に、一之瀬様とお見合いをされて、こちらにお輿入れなさいました。
その頃、雪乃様のご実家の財政はまさに火の車でございましたから…ご実家のためにご結婚をお決めになった部分は大きいでしょう。
…けれど一之瀬様は雪乃様を一眼見た時から、愛してしまわれ、夢中になっておられました。
雪乃様はそんな一之瀬様の情熱や愛情を受け入れ、段々と一之瀬様をお好きになっていらしたご様子でした。
一之瀬様は知的で教養も深くお品のある魅力的なお方でしたから…。
…そう…。
お二人はとてもお似合いな、お幸せそうなご夫婦でいらしたのです…」

ため息混じりのひとことが、いとの口から付け加えられた。

…高遠様と偶然、再会されるまでは…。
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