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それが運命の恋ならば
第5章 真実の口
「…雪乃様が一之瀬様とご結婚なされて三年ほど経ち、李人様がお生まれになって、間もなくの頃でした。
高遠様がこちらの旅館にご友人とともにお泊まりになられたのです。
偶然の再会に、どれほどお二人は驚かれたことでしょう。
雪乃様は高遠様との連絡を一切絶っておられましたから…。
…そうして再会なさってしまえば、再びお二人はお互いに強く惹かれあってしまわれたのです…」

「…で?二人はヤッちゃって、その現場をオヤジに見られたってこと?」
わざと偽悪的に桃馬が口を出した。

「桃馬!下品なことを言うな!」
李人の鋭い叱責が飛ぶ。

「何綺麗ごと言ってんのさ、兄貴。
昔恋人同士だった二人が再会したら、ヤることはひとつだろう?」
苛々する桃馬に
「桃馬様」
禅がはっきりと嗜める。

「いいえ」
いとがすぐさま答えた。

「お二人は決して男女の一線を越えられるような過ちは犯されませんでした。
…ただ時折、高遠様はおひとりでお泊まりに来られるようになりました。
そうして人目を忍んで雪乃様にお会いになり、静かにお二人だけの時間を過ごしておられました…。
…そのためのご協力は、私がいたしました」

「…いとさん…」
ずっと黙っていたトキが、複雑な表情でため息を漏らした。

「それならばなぜ、父は…」
李人の問いに、いとが苦しげに答える。

「…たまたまお二人がご一緒にいらっしゃるところをご覧になってしまわれたのです。
…しかも、高遠様が雪乃様に愛の告白をされ、雪乃様もそれに答えられ、お手を握り合っているところに遭遇され…」

いとは哀しげに眼を伏せ、呟いた。

…その日から、何もかもが変わってしまいました…。



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