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それが運命の恋ならば
第5章 真実の口
いとは覚悟を決めたかのように、淡々と話を続けた。
「…旦那様の一言で、雪乃様はお心を閉ざしてしまわれました。
もう、旦那様との仲を修復しようとも、歩み寄ろうともなさいませんでした。
雪乃様は嘆かれることも、憤ることもなさいませんでした。
…ただ、美しい人形のように、無機質に無表情でいらっしゃいました。
…そうしてある日のこと、ふらふらと黙ってお家を出てしまわれたのです」
「え⁈家出⁈」
桃馬が眼を見張る。
「…はい」
「俺がお腹にいたんでしょ?
お母様は何処に行ったの?」
「…最初はご実家でございました。
けれど旦那様の経済的援助を受けられているご実家は、いつまでもいられるところではありません。
…私はあまりに雪乃様がお可哀想でならなくて、再び高遠様にご連絡を取りました。
高遠様はもう既にご結婚されていらっしゃいました。
けれど、政略結婚で結ばれたゆえか、ご夫婦仲は冷え切っておられたご様子でした。
…雪乃様の窮地を聞きつけ、高遠様はすぐさま駆けつけられ、そのまま雪乃様を攫うように連れていかれたです」
凪子は息を呑んだ。
李人が眼を眇めながら、何かを思い出すように口を開いた。
「…そういえば…お母様は桃馬を妊娠中に急に半年ほど入院されたことがあった…。
重い悪阻だからと…それから子供は感染症を持ち込むといけないからとお見舞いにも行かせてはもらえなかった…。
…あれは…」
「…はい。
あの時、雪乃様は高遠様の別荘に暫く匿われておられました」
…そして…
いとは真っ直ぐに李人を見上げた。
「…お二人は…駆け落ちをなさろうと決意されたのです」
「…旦那様の一言で、雪乃様はお心を閉ざしてしまわれました。
もう、旦那様との仲を修復しようとも、歩み寄ろうともなさいませんでした。
雪乃様は嘆かれることも、憤ることもなさいませんでした。
…ただ、美しい人形のように、無機質に無表情でいらっしゃいました。
…そうしてある日のこと、ふらふらと黙ってお家を出てしまわれたのです」
「え⁈家出⁈」
桃馬が眼を見張る。
「…はい」
「俺がお腹にいたんでしょ?
お母様は何処に行ったの?」
「…最初はご実家でございました。
けれど旦那様の経済的援助を受けられているご実家は、いつまでもいられるところではありません。
…私はあまりに雪乃様がお可哀想でならなくて、再び高遠様にご連絡を取りました。
高遠様はもう既にご結婚されていらっしゃいました。
けれど、政略結婚で結ばれたゆえか、ご夫婦仲は冷え切っておられたご様子でした。
…雪乃様の窮地を聞きつけ、高遠様はすぐさま駆けつけられ、そのまま雪乃様を攫うように連れていかれたです」
凪子は息を呑んだ。
李人が眼を眇めながら、何かを思い出すように口を開いた。
「…そういえば…お母様は桃馬を妊娠中に急に半年ほど入院されたことがあった…。
重い悪阻だからと…それから子供は感染症を持ち込むといけないからとお見舞いにも行かせてはもらえなかった…。
…あれは…」
「…はい。
あの時、雪乃様は高遠様の別荘に暫く匿われておられました」
…そして…
いとは真っ直ぐに李人を見上げた。
「…お二人は…駆け落ちをなさろうと決意されたのです」