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それが運命の恋ならば
第5章 真実の口
皆は息を呑み、誰もが身動ぎすらできなかった。
…今、考えもつかなかった思いがけない恐ろしい真実が明らかになろうとしていたからだ。

…哀しいお伽噺の結末を語るかのような、いとの声はまだ続く。

「…翌日、軽井沢警察から連絡がありました。
別荘にほど近い湖に旦那様のメルセデスが沈んでいるのが見つかったと。
…そうして、車内からは旦那様と奥様のご遺体が発見されたとのことでした…」

凪子は叫び出さないように震える掌で口を覆った。
…何という…何という悲劇の終幕なのだろうか。

「何で…⁈
何でだよ…!!」

…お母様…!
と、子どもに戻ったかのようにその名を叫びながら、桃馬は禅に抱き竦められながら、声を殺して泣き出した。

禅は黙って桃馬の背中を撫ぜる。
…まるでその仕草は優しい母でもあり、父でもあった。

「…私だけで、極秘に軽井沢警察に確認に向かいました。
それは警察の指示でした。
刑事さんの話では、無理心中の疑いが濃厚だから、内密に事を運びたいとのことでした。
まだ中学生の李人様には、真実はとても伝えられなかったからです」

やや落ち着きを取り戻した李人が、壁に凭れ掛かったまま、2本目の煙草に火を点けた。

「…そうだった…。
あの日は学校の部活から帰宅すると、トキが真っ青な貌をして私を出迎えた…。
…お父様とお母様の乗った車が雪道でスリップ事故を起こし、湖で亡くなったと…。
いとが確認に行っているから、私たちはここで待つようにと…。
まだ赤ん坊の桃馬がいるからここを離れる訳にはいかないからと…」



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