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それが運命の恋ならば
第5章 真実の口
「…だから、私は両親が荼毘に付され、お骨となり戻ってくるまで、ずっと家にいた。
細かいことも聞かなかったし、聞かされなかった。
…いと。
母の最期は…?」

いとは恭しく頭を下げた。
まるで、死者に敬意を払うかのように…。
「…お二人ともとてもお綺麗なお貌をされておいででした…。
それはもう不思議なほどに…。
…特に旦那様は…どこかお幸せそうなお貌をなさっておいででした…」
「…幸せそう…?」
李人が怪訝そうに眉を顰めた。

「はい。
…あの日、雪乃様からドライブに誘われた旦那様は初めて拝見するような嬉しそうなお貌をなさっておいででした。
車に乗り込まれる時に仰った一言が、今も忘れられません」

「父は何と?」

「…君からドライブに誘われるなんて初めてだ。
だから雪が降ったんだね…と…。
どこか照れたような…まるで少年のような無邪気な笑顔でした」

李人が静かに端正な瞼を閉じた。
「…そうか…」

いとが静かに付け加えた。

「…雪乃様は、少し驚いたような貌をされて…けれどすぐに、それはそれはお優しい微笑みを浮かべられました。
…ですから、私の雪乃様の最期のお貌は、お美しいものだけなのですよ…」
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