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それが運命の恋ならば
第5章 真実の口
「…いと…」

いとが居ずまいを正し、改めて李人を見上げる。
「李人様。
李人様が高遠様への誤解をお持ちになったままでは、雪乃様は到底浮かばれません。
…私は、禅に李人様が凪子様を娶られた一部始終を聴きました。
もうお分かりでございましょう。
高遠様は何も悪くはないのです。
ましてや凪子様には何の罪もございません。
…どうかお考えを改めてくださいませ。
…そして、今、病に臥せておられる高遠様と凪子様を、なんとかご対面して差し上げていただけませんか?
高遠様は、今、何よりもそれを望んでおられるはず…。
天国の雪乃様もきっとそうです」

雷に撃たれたかのように李人がびくりと肩を震わせた。
「…いと…。私は…」


「李人様。
雪乃様はきっと凪子様が李人様のお嫁様になられたことを誰よりも喜んでおられます。
高遠様のお血筋のお嬢様と李人様が結ばれるなんて…それこそが悲願だったに違いありません」
…ですから…

穏やかに諭すようないとの言葉も耳に入らないかのような、茫然とした表情のまま、李人は凪子を振り返った。

…その表情は、いつもの李人ではなかった。
どこか頼りなげな…傷つき苦しんでいる子どものような表情であった。

「…凪子…」
掠れた弱々しい声が、喘ぐように告げる。

「…私は…何の罪もない貴女に…何という酷い仕打ちをしてしまったのか…。
…高遠氏に会わさないばかりか、貴女を…貴女を…!」
胸が痛くなるような悲痛な呟きが、その形の良い唇から漏れた。

「李人様…私は…!」
思わず凪子は長椅子から立ち上がり、李人の前まで駆け寄った。
…私は…李人様が…

告げなくてはならないことはたくさんある。
聞いて欲しいこともたくさん…。

李人の美しい手が恐る恐る凪子に差し出された。
「…李人様…」
ほっとした凪子がその手に手を伸ばした刹那…李人がはっとしたように眼を見張った。
潤んだ黒曜石の瞳が、怖がる子どものように凪子を見下ろした。

李人の手が、力なく落ちる。

「…李人様…?」

そうして無言のまま凪子に背を向けると、李人は足早に大客間を後にした。

「李人様…!」

凪子の叫び声に、李人が振り返ることはなかったのだ。

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