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それが運命の恋ならば
第5章 真実の口
「…そんなことがあったのか…」
雄大がため息を吐いた。

…雄大が泊まっている旅館の離れに、凪子と桃馬、そして雄大と気が合い話し相手になっていたケンがいた。


『李人様はお部屋に籠られておいでです。
暫く誰も近づけないようにとのお達しでございます』

李人が姿を消したのち、暫くしてトキが慌ただしくそう告げに来た。

『…それから、桃馬様と凪子様は今夜は旅館の方にお泊まりくださいとのことです』
トキの表情は見たことがないほどに冷たく、さながら能面のようで、凪子は何も言えなくなってしまったのだ。


「…なんか…もうもう悲劇だわサスペンスだわ…一体どうしたらいいのかしら…!
リーくん、かわいそう!」
いとが語った一部始終を桃馬から聞いたケンがべそべそ泣きながら盛大に鼻をかむ。

「兄貴もだけどさ、俺も相当可哀想だろ?」
桃馬がじろりとケンを見遣る。
「な〜んも記憶のないお母様がさ!
事故じゃなくてオヤジと無理心中してたなんてさ!
これ、犯罪ギリギリじゃね〜の?
俺のガラスのハートは粉々だよ!」

ケンがハンカチで涙を拭うと、桃馬を抱きしめた。
「そうだわよそうだわよ!
桃ちゃんもかわいそうだわよ!
アタシがヨシヨシしてあげる!」
「キモ!やめろ!離せ!俺にそっちの趣味はね〜んだよ!」
「ああん!つれないコ!」

二人が大袈裟に騒いでいるのは、恐らく沈んだ様子の凪子に気を遣っているのだろう。

不意に雄大が激しい口調で口火を切った。

「…それを言うたら凪子が一番可哀想なんやないか?
…復讐…てなんや?
李人さんは、どういうつもりで凪子にプロポーズしたんや?
最初から身勝手な復讐目的だったんか?
そんなの絶対に許せへん!」




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