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それが運命の恋ならば
第5章 真実の口
「…わ、私…李人様を恨んではいないわ。
…酷いことをされたとも…今は思っていないの。
ここに嫁いで来たことも、後悔はしていないわ。
…それに…李人様は、何もご存知なかったのですもの。
仕方がないことだわ」

…私は知っている…と、凪子は思った。
凪子にもっと学ぶ機会を与えてくれたこと…
間宮の魔の手から助けてくれたこと…
優しく勉強を教えてくれたこと…
李人の美しいキングスイングリッシュ…。
それは、決して嘘やまやかしではないことを…。

…それに…
そうだ。
長い年月、憎んでいた高遠が、実は最愛の母と愛し合っていたのだ。
しかも、母はその男を守るために、父親と無理心中を遂げたのだ。
その衝撃の事実は直ぐには受け入れられないだろう。
ましてや、凪子はその高遠の娘なのだから…。

「…凪子…」
納得がいかぬように憮然とする雄大に
「李人様は今、混乱されているんだわ。
私は李人様が落ち着かれるまでお待ちするつもりよ」
凪子ははっきりと言い切った。

ケンが明るく頷いた。
「そうねえ。
夫婦のことは夫婦にしか分からない繊細なものがあるものよ。
凪子ちゃんが待つと言ったのなら、アタシたちにできることはそれを見守ることだけじゃない?
凪子ちゃん!応援するわ!」

「俺も兄貴を信じるよ。
兄貴はなんのかんの言いながら、凪子ちゃんのことを大事にしてたと思うからさ」
桃馬がやや不本意そうに呟いた。

「ああん!桃ちゃん!やっぱりイイコねえ〜!」
またもやケンにハグをされそうになり
「触るんじゃねえ!ジジイ!
ぶっ飛ばす!」
憤然とした桃馬なのだった。






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