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それが運命の恋ならば
第5章 真実の口
凪子の居室で、トキに丁寧に化粧と髪形を施してもらう。
ふわりとカールした髪は凪子の美貌を更に華やかに引き立たせた。
洋服は昼間とはまた違う白木蓮色のシルクのツーピースだ。
いつの間に用意されていたのか…尋ねる気力も凪子には、ない。
凪子の白くほっそりとした首筋に高価な真珠の首飾りがかけられる。
イヤリングも美しい照りのピンクパールだ。
…離婚され、これから初めて会う父親のもとに送り返されるというのに、まるで嫁入り支度のように入念だ。
「…凪子様、大変にお綺麗です」
真珠の髪留めを飾り終え、トキは低い声で告げた。
「…ありがとう、トキさん」
そして、深々と頭を下げた。
「…お世話になりました…」
トキは畳に額を擦り付けるように平伏した。
その紬の背中が小刻みに震えている。
…トキは泣いているようだった。
最初はとっつき難く、冷たく感じたトキだが、今ではまるで親戚のように親しく温かく感じられるようになっていた。
さりげなく、けれど親身に世話を焼いてくれていたのもトキだ。
「…お元気でね。トキさん」
凪子は寂しく微笑んだ。
高遠家からの迎えの車が到着するまでにはまだ時間がある。
ようやく馴染んできたこの屋敷と別れるのも、あと僅かだ。
小さな声で、トキに告げる。
「…少し、お庭を散歩してまいります」
ふわりとカールした髪は凪子の美貌を更に華やかに引き立たせた。
洋服は昼間とはまた違う白木蓮色のシルクのツーピースだ。
いつの間に用意されていたのか…尋ねる気力も凪子には、ない。
凪子の白くほっそりとした首筋に高価な真珠の首飾りがかけられる。
イヤリングも美しい照りのピンクパールだ。
…離婚され、これから初めて会う父親のもとに送り返されるというのに、まるで嫁入り支度のように入念だ。
「…凪子様、大変にお綺麗です」
真珠の髪留めを飾り終え、トキは低い声で告げた。
「…ありがとう、トキさん」
そして、深々と頭を下げた。
「…お世話になりました…」
トキは畳に額を擦り付けるように平伏した。
その紬の背中が小刻みに震えている。
…トキは泣いているようだった。
最初はとっつき難く、冷たく感じたトキだが、今ではまるで親戚のように親しく温かく感じられるようになっていた。
さりげなく、けれど親身に世話を焼いてくれていたのもトキだ。
「…お元気でね。トキさん」
凪子は寂しく微笑んだ。
高遠家からの迎えの車が到着するまでにはまだ時間がある。
ようやく馴染んできたこの屋敷と別れるのも、あと僅かだ。
小さな声で、トキに告げる。
「…少し、お庭を散歩してまいります」