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それが運命の恋ならば
第1章 出逢い
「…あとは…。
弟だけなのですが…」
李人が微かに眉を顰めたのと同時に、廊下から荒っぽい足音が、聞こえてきた。
「…お待ち下さい…!せめてお着替えを…」
慌てふためく女中の声に続き…
「うるせえなあ。
別に兄貴に嫁が来ようと俺にはカンケーねえし」
煩げで粗野な若い男の声が響いた。
ざわざわと使用人達が騒めく中、登場したのは、着崩した制服姿のすらりと背の高い金髪の青年だった。
「桃馬…」
呆れ果てたような李人の声が漏れた。
「着物に着替えて来なさいと言ったはずだ」
厳しい李人の声に、桃馬と呼ばれた青年は鼻で笑った。
…金髪にピアス、明らかに不良と言われるような風体の青年だ。
けれどその貌は李人に良く似て、驚くほどに整っている。
「着物?時代劇かって〜の。
いや、江戸川乱歩か横溝正史の世界だな。
自分ちながらぞっとするよ。
なんなんだよ、このどんよりしたヘビーな世界観。
昔の角川映画か?
スケキヨはどこだよ、キモ」
わざと大袈裟に居並ぶ使用人たちを見渡し、そののち、凪子に眼を遣った。
桃馬の切長の瞳が輝いた。
「…へえ…。
これが兄貴の嫁さんか」
無遠慮にぐいぐい近づくと、凪子をじろじろと見渡す。
「…あ、あの…」
桃馬が感心したように首を振った。
「すんげえ美人じゃん。
尼寺から来るって聞いてたから、ジャクチョーか?て思ってたけどさ」
「…ジ、ジャクチョー?」
たじろぐ凪子に、桃馬は更に近づく。
「…こんな美人なら、兄貴も一石二鳥だな」
どこか嘲笑めいた笑いに、李人が静かに一喝した。
「桃馬。やめなさい」
弟だけなのですが…」
李人が微かに眉を顰めたのと同時に、廊下から荒っぽい足音が、聞こえてきた。
「…お待ち下さい…!せめてお着替えを…」
慌てふためく女中の声に続き…
「うるせえなあ。
別に兄貴に嫁が来ようと俺にはカンケーねえし」
煩げで粗野な若い男の声が響いた。
ざわざわと使用人達が騒めく中、登場したのは、着崩した制服姿のすらりと背の高い金髪の青年だった。
「桃馬…」
呆れ果てたような李人の声が漏れた。
「着物に着替えて来なさいと言ったはずだ」
厳しい李人の声に、桃馬と呼ばれた青年は鼻で笑った。
…金髪にピアス、明らかに不良と言われるような風体の青年だ。
けれどその貌は李人に良く似て、驚くほどに整っている。
「着物?時代劇かって〜の。
いや、江戸川乱歩か横溝正史の世界だな。
自分ちながらぞっとするよ。
なんなんだよ、このどんよりしたヘビーな世界観。
昔の角川映画か?
スケキヨはどこだよ、キモ」
わざと大袈裟に居並ぶ使用人たちを見渡し、そののち、凪子に眼を遣った。
桃馬の切長の瞳が輝いた。
「…へえ…。
これが兄貴の嫁さんか」
無遠慮にぐいぐい近づくと、凪子をじろじろと見渡す。
「…あ、あの…」
桃馬が感心したように首を振った。
「すんげえ美人じゃん。
尼寺から来るって聞いてたから、ジャクチョーか?て思ってたけどさ」
「…ジ、ジャクチョー?」
たじろぐ凪子に、桃馬は更に近づく。
「…こんな美人なら、兄貴も一石二鳥だな」
どこか嘲笑めいた笑いに、李人が静かに一喝した。
「桃馬。やめなさい」