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それが運命の恋ならば
第5章 真実の口
門灯が灯る正面玄関前には、桃馬と雄大がいた。
雄大は、凪子を見送ると言って聞かなかったので、屋敷の方で待っていたのだ。
後ろに控えるのは、トキを始め、いと、そして屋敷に仕える使用人たちだ。
皆、一様に沈んだ哀しげな表情だ。
涙ぐんでいる者もいる。
…数ヶ月とはいえ、もうすっかり凪子と馴染み、気心が知れていたのだ。
凪子は近頃、厨を手伝うようになっていた。
奥様にそんなことはさせられないと、女中たちは恐縮していたが、凪子は台所仕事が大好きだからと頼み込んで働かせて貰っていたのだ。
だから、最近では使用人たちとも仲良くなっていたので、彼女たちとの別れはとても寂しい。
「兄貴はどこに行ったんだよ!
まさか凪子ちゃんを見送らない気なのかよ⁈」
桃馬が憤懣やる方ないと言った貌で、苛立った。
「…どのツラ下げて見送るんや。
自分から凪子を捨てるんやで。
そりゃ見送れんわな」
吐き捨てるように雄大が答えた。
「…雄ちゃん…」
そっと声をかける。
雄大が辛そうに凪子を見つめる。
「堪忍やで、凪子。
俺かてこんなこと言いとうない。
けど、あんまり酷いやり方やから、李人さんに腹立って腹立ってたまらんのや」
凪子は静かに微笑んだ。
「…ありがとう、雄ちゃん。
でも、もういいの。
…私、高遠さんのところに行くわ…。
なんといっても私のお父さんなんだし…一度も会ったことないのに、私を娘と認めて、会いたがってくれているなら…ありがたい話だわ」
雄大は、凪子を見送ると言って聞かなかったので、屋敷の方で待っていたのだ。
後ろに控えるのは、トキを始め、いと、そして屋敷に仕える使用人たちだ。
皆、一様に沈んだ哀しげな表情だ。
涙ぐんでいる者もいる。
…数ヶ月とはいえ、もうすっかり凪子と馴染み、気心が知れていたのだ。
凪子は近頃、厨を手伝うようになっていた。
奥様にそんなことはさせられないと、女中たちは恐縮していたが、凪子は台所仕事が大好きだからと頼み込んで働かせて貰っていたのだ。
だから、最近では使用人たちとも仲良くなっていたので、彼女たちとの別れはとても寂しい。
「兄貴はどこに行ったんだよ!
まさか凪子ちゃんを見送らない気なのかよ⁈」
桃馬が憤懣やる方ないと言った貌で、苛立った。
「…どのツラ下げて見送るんや。
自分から凪子を捨てるんやで。
そりゃ見送れんわな」
吐き捨てるように雄大が答えた。
「…雄ちゃん…」
そっと声をかける。
雄大が辛そうに凪子を見つめる。
「堪忍やで、凪子。
俺かてこんなこと言いとうない。
けど、あんまり酷いやり方やから、李人さんに腹立って腹立ってたまらんのや」
凪子は静かに微笑んだ。
「…ありがとう、雄ちゃん。
でも、もういいの。
…私、高遠さんのところに行くわ…。
なんといっても私のお父さんなんだし…一度も会ったことないのに、私を娘と認めて、会いたがってくれているなら…ありがたい話だわ」