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それが運命の恋ならば
第5章 真実の口
「…凪子…!」
怒ったように雄大が凪子のほっそりとした白い手を握り締める。

「俺はお前がどこに行こうと、誰の娘になろうと、ずっとずっとお前の味方や。
俺は…お前が…」
言いかけて、ふっと何かを諦めたように…けれど優しく…
…大切なんや…。
と、微笑んだ。

「ありがとう、雄ちゃん。
雄ちゃんのおかげで、私はいつも元気になれた。
前を向いて歩いてこられた。
本当に感謝しているわ」
凪子から手を握り返した。

雄大が照れたように笑った。
「困ったことがあったらすぐに知らせろよ。
俺はお前の王子様…じゃなくて、ボディガードだからな」
凪子は眦の涙を指で拭い、頷いた。
「…ありがとう…雄ちゃん…」

隣の桃馬が、凪子にぎゅっと抱きついた。
「おい!お前!」
むっとしたように貌を顰める雄大に構わず、さらに抱きつく。
「凪子ちゃん…!大好きだよ…!
…俺…早く大人になって、立派な男になって、凪子ちゃんにプロポーズする!
だから待ってて!」

トキが啜り泣きながら零す。
「…まったくもう…桃馬さんは高校も留年しそうなていたらくでいらっしゃるのに…!
何がプロポーズですか!」

「うるせえなあ、トキは。
…ね、凪子ちゃん。長い目で待っててよ。
あとさ、俺、凪子ちゃんに会いに行くから。
絶対、会いに行くから」

凪子は桃馬の背中を抱き返した。
「…ありがとう、桃馬さん。
桃馬さんのお陰で、本当に楽しかったわ」

…桃馬が凪子をここに馴染ませてくれたのだ。
派手な髪で、勉強嫌いでいわゆる不良と呼ばれる男の子…。
けれど本当はとても優しくて、思い遣りのある男の子…。
桃馬のお陰でケンとも知り合え、遅れてきた学生生活のような楽しさを味わえたのだ。

「…桃馬さん。トキさんの言うことをよく聞いて…それから、李人様と仲良く過ごしてね…。
…桃馬さんの幸せを、ずっと祈っているわ…」

「…凪子ちゃん…」
桃馬が李人によく似た端正な貌をくしゃりと歪ませた。
そうして、ぎこちなく凪子の額にキスを落とす。

「あ!お前、何すんねん!」
雄大が叫ぶ。

「マジ、ちょ〜倍速で大人になるから待っててな」
にやりと笑ったその貌は、いつもの陽気な桃馬だった。






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