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それが運命の恋ならば
第5章 真実の口
「…いやあ、良かった…。
旦那様は本当に凪子様にお会いできることを、喜んでおられますよ。
…しかも…こんなにもお美しいお嬢様だったなんて…。
屋敷の皆もどんなに驚くことでしょう」
陽気な性格らしい初老の運転手は、にこにこしながら凪子に話しかけてきた。

「…そうですか…。
それなら良かったです…」
凪子はバックミラー越しに微笑んだ。
初対面なのに、そんなに喜んで歓迎されるのは、やはり嬉しいことだ。
自分に何が出来るか分からないが、高遠氏のために、出来ることはなんでもして差し上げよう…と心に決める。

「凪子様のお部屋やら調度品やら…ほかにも色々と指示されてお揃えになっている旦那様はそれはそれはお楽しそうで…ご病気なのも忘れそうなほどですよ」

…そうだ。
高遠氏は、病気療養中なのだった。
凪子は心配そうに、運転手に尋ねる。
「…あの…。
高遠様のお加減はいかがなのでしょうか?
どちらがお悪いのですか?」

運転手はハンドルを操りながらしみじみと答える。
「心臓に持病をお持ちでしてね。
ペースメーカーの手術を受ければ、普通の日常は送れるそうなのです。
主治医に再三勧められていらっしゃるのですが、凪子様を見つけられたものの、お会いすることが叶わないと分かり、すっかり投げやりになられていて…もう死んでも構わないと仰っていたのですよ。
それが昨日、一之瀬様からご連絡を頂いて…旦那様は朝からもうそわそわされて、すっかりお元気を取り戻されていらっしゃいます。
今ならきっと手術についても前向きにお考えになるのではないでしょうか。
…どうか、凪子様からもお口添えして差し上げて下さい」

…高遠氏の病状はそう悪くはないらしいと分かり、ほっと安堵する。
「もちろんですわ。
…私が出来ることならなんでも…」

…と、その時…。
夜の帳の中、車窓に映し出された風景にふと眼を遣り、凪子は息を呑んだ。
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