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それが運命の恋ならば
第6章 新たなる運命
翌朝、凪子は泰彦のためにクレソンの粥を作った。
キッチンガーデンには様々な野菜やハーブが植えられていた。
中でも、青々としたクレソンを見つけた凪子は、厨房の料理長に尋ねた。
「お庭のお野菜を少しいただいても良いですか?」

…そうして、クレソンやミントを籠一杯に摘むと…
「厨房をお借りしますね」
自ら泰彦への朝食を整え始めたのだ。
「まあ…!お嬢様にそんなことをさせるわけには…」
料理長のマサは大層恐縮しながらも、その手際の良さと巧みさに眼を見張った。
そうして、この不意に現れた高遠家の当主の娘の輝くばかりの美しさと、心優しさと気働き、そして、隠しようのない薫り立つような気品に心から感服したのだった。



「…お口に合うか分かりませんが…」

凪子は恥ずかしそうに泰彦にクレソンの粥を勧めた。
温かなミントティーも茶器に注ぐ。

「クレソンは身体にとても良いのです。
高血圧を抑える作用や、血をきれいにする効果もあるそうです。
ミントは消化を助ける作用やリラックス効果もあります。
尼寺で習いました」
と、微笑んだ。

泰彦はしみじみと嬉しげに凪子を見つめた。
「…ありがとう、凪子。
君は本当に優しい娘だね…」
そうして粥を口に運び、感激したように眼を細めた。
「とても美味しいよ。
こんなに美味しいお粥を食べたのは、生まれて初めてだ…」
「…お父様…。
…良かったです…」
…父親と朝食をともにできるなんて…。
凪子は改めて、その幸せを噛みしめていた。

泰彦は凪子とゆっくりと食事を取りながら、様々な話をしてくれた。

…本妻とは数年前に離婚していること。
朱音にした仕打ち、そして凪子をどこかに隠したことを泰彦は許せずに決別を口にしたのだそうだ。
本妻は頑として離婚を受け入れなかった。
そこでその際に莫大な慰謝料と言う名の手切金を支払ったので、もう二度とこの屋敷に現れないだろう…と、泰彦はため息混じりに語ったのだ。

…そして…。

泰彦はさりげなく人払いをしてから、そっと口を開いた。

「…李人くんのことだが…」
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