この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
それが運命の恋ならば
第6章 新たなる運命
凪子は思わず手にしたカップを取り落としそうになる。
「…李人…さま…」
「ああ、そうだ。
…彼は私に電話をくれた際に、非常に誠実に謝罪をしたのだよ。
『凪子さんには大変申し訳ないことをしてしまいました。
私は貴方を誤解していました。
そのために、凪子さんにとても辛い思いをさせてしまいました。
凪子さんは貴方にお返しいたします…』と…」
「…そうですか…」
凪子は静かに俯く。
心が深々と冷えてくる。
…やはり、そうなのだ…。
「…君を前にこんなことを言うのは酷だが、李人くんが凪子を娶ったのは、私への復讐だろう。
君が私の娘だと分かり、会わせてほしいと頼んだ時も、彼はその一点張りだった。
『貴方への復讐のために凪子さんと結婚したのです。
何もかも、母の仇を取るためですよ』と…」
李人の言葉が胸に深く突き刺さる。
改めて泰彦の口から再現されると、それが紛れもない事実なのだと思い知らされる。
「…李人くんがそんな気持ちになったのは、全て私の責任だ。
思春期の頃から両親の諍い、両親の死と、辛い体験をしてしまったのだから…。
李人くんに謝罪し、償わなくてはならないのは私だ。
それなのに、彼は凪子を返してくれた…。
私は今、彼への感謝の気持ちで一杯だよ…」
「…お父様…」
…このひとはやはり雪乃さんを愛していたのだ。
そして、寛大で温かな心の持ち主なのだと、しみじみと感じ入る。
それと同時に、やるせ無いような寂しい気持ちがじわりと沸き起こる。
…そう…。分かっていた…。
やはり李人様は、私と復讐のために結婚されたのだわ…。
凪子は寂しく微笑む。
そんなことは、分かりきっていたことではないか…。
本人の気持ちを、何度も本人の口から聞かされたではないか…。
けれど私はまだ、彼を信じたいような気持ちになっていたのだ…。
…もしかして…私と李人様の間には…愛に似た感情が存在していたのではないか…と。
…けれど…
凪子は李人への想いを断ち切るように、さっと頭を振る。
「…もう良いのです。お父様。
私は李人様とはお別れしました。
これからはお父様のお側で、お父様のために生きてまいります」
「…凪子…!」
泰彦が凪子を愛おしげに抱き寄せる。
「…ありがとう、凪子…」
…これで良いのだ…。
凪子は瞼に浮かんだ李人の面影を忘れるように、泰彦の胸に身体を預けた。
「…李人…さま…」
「ああ、そうだ。
…彼は私に電話をくれた際に、非常に誠実に謝罪をしたのだよ。
『凪子さんには大変申し訳ないことをしてしまいました。
私は貴方を誤解していました。
そのために、凪子さんにとても辛い思いをさせてしまいました。
凪子さんは貴方にお返しいたします…』と…」
「…そうですか…」
凪子は静かに俯く。
心が深々と冷えてくる。
…やはり、そうなのだ…。
「…君を前にこんなことを言うのは酷だが、李人くんが凪子を娶ったのは、私への復讐だろう。
君が私の娘だと分かり、会わせてほしいと頼んだ時も、彼はその一点張りだった。
『貴方への復讐のために凪子さんと結婚したのです。
何もかも、母の仇を取るためですよ』と…」
李人の言葉が胸に深く突き刺さる。
改めて泰彦の口から再現されると、それが紛れもない事実なのだと思い知らされる。
「…李人くんがそんな気持ちになったのは、全て私の責任だ。
思春期の頃から両親の諍い、両親の死と、辛い体験をしてしまったのだから…。
李人くんに謝罪し、償わなくてはならないのは私だ。
それなのに、彼は凪子を返してくれた…。
私は今、彼への感謝の気持ちで一杯だよ…」
「…お父様…」
…このひとはやはり雪乃さんを愛していたのだ。
そして、寛大で温かな心の持ち主なのだと、しみじみと感じ入る。
それと同時に、やるせ無いような寂しい気持ちがじわりと沸き起こる。
…そう…。分かっていた…。
やはり李人様は、私と復讐のために結婚されたのだわ…。
凪子は寂しく微笑む。
そんなことは、分かりきっていたことではないか…。
本人の気持ちを、何度も本人の口から聞かされたではないか…。
けれど私はまだ、彼を信じたいような気持ちになっていたのだ…。
…もしかして…私と李人様の間には…愛に似た感情が存在していたのではないか…と。
…けれど…
凪子は李人への想いを断ち切るように、さっと頭を振る。
「…もう良いのです。お父様。
私は李人様とはお別れしました。
これからはお父様のお側で、お父様のために生きてまいります」
「…凪子…!」
泰彦が凪子を愛おしげに抱き寄せる。
「…ありがとう、凪子…」
…これで良いのだ…。
凪子は瞼に浮かんだ李人の面影を忘れるように、泰彦の胸に身体を預けた。