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それが運命の恋ならば
第6章 新たなる運命
「…凪子の美しさは実に罪だな…」
自分のために特別ブレンドのルイボスティーを優雅な所作で淹れる凪子に、泰彦は悪戯めいた口調で呟いた。

「…え?」
振り返る娘の艶やかな黒髪がさらりと揺めく。
それは初夏の明るい陽射しにきらきらと煌めき、泰彦は思わず眼を奪われた。

漸く巡り会えた娘の姿を、泰彦は改めてベッドに横たわりながらじっと眺める。

…背中まである絹糸のような黒髪、細面の貌はきめ細やかで透き通るように白い。
優しい柳眉、黒眼勝ちの大きな瞳は常に潤んでいてしっとりとした情感を湛えている。
長く濃い睫毛、形の良い鼻筋、口唇は少女めいた珊瑚色だ。

…よくぞこのように息を呑むような美しい娘が、密かに尼寺で育てられていたものだと感動すら覚える。
まさに奇跡だ。

母親の朱音は、確かに美しい娘ではあったが、凪子ほどの美貌や気品はなかった。
泰彦は大抵の美女は見慣れていたが、凪子の美しさは群を抜いている。
我が娘ながら、惚れ惚れするような優美さだ。
…どこか浮世離れしているような聖性は、やはり寺育ちだからだろうか…。
まだ二十歳と若いのに浮ついたところのない、しっとりと落ち着いた情緒と、そしてどこかひんやりとした色香は、天性のものなのか…それとも短い結婚生活で、李人に開花させられたものなのか…。
泰彦には知る由はなかった。
けれど、この娘の無意識にひとを惹きつけ、いつの間にか虜にしてしまう微かに妖しい美しさには、泰彦ですら思わず魅せられてしまうのだ。

白いレースのブラウスに濃紺のフレアスカート、白いエプロンという地味な服装が却って、凪子の美貌を引き立たせている。

…だから、あの若い医師のような青年が、あっという間に心を奪われてしまうのだろう…。

誇らしいような、やきもきするような…複雑な感情に襲われ、泰彦は思わず苦笑する。

「何ですの?お父様?」
凪子が不思議そうに小首を傾げ、ベッドに歩み寄る。
「起きられますか?
お寒くはありませんか?」
細やかに世話を焼くその白い手を、泰彦は優しく握りしめた。

「本田先生だよ。
…どうやら凪子に一目惚れされたらしい」










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