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それが運命の恋ならば
第6章 新たなる運命
「…仮面…ですか…」

ケンがしんみりと話し出す。
「そう。決して自分の心を曝け出さない…自分の感情を封じ込めたリーくんだったわ。
…アタシね、一度そんなリーくんを見たことがあるの。
中学生のとき、ご両親を事故で亡くされたとき…。
…あんなに美しいけれど、近寄り難いひんやりとしたリーくんを久しぶりに思い出しちゃった…」

…仮面…。
私が見ていた李人様は仮面を被っていたのかしら…。
凪子はぼんやりと思い返す。

最初は…そうだったかも知れない。
凪子を復讐の為に妻に迎え入れたと言い、夜の閨で淫靡な屈辱を与えようとした…。
禅に凪子の赤裸々な姿を見せつけ、更なる辱めを与えようとした。

暫くは、李人の気持ちが分からなかった。
憎まれていることが辛く、哀しかった。
その反面、暗く歪んだ辱めの中から生まれた、甘くほろ苦い背徳の蜜のような快楽を、掴み取るようになったのだ…。
…自分はなんとはしたない、愚かな人間なのだと絶望感に苛まれた。

…けれど…

ある時、気づいたのだ。
李人の瞳の奥にある、微かな痛みのような色を…。
快楽と苦悶に乱れ、涙を流す凪子の心をそっと掬い上げるように抱きしめてくれたことを…。

それから、彼が与えてくれた優しさを…。
ふとした瞬間に見せる無邪気な表情を…。
勉強を教えてくれたあの穏やか表情、微笑みを…。
あれらが嘘だったとは思えない…。

けれど…。

一方、切なく思い返す。

…自分はもう、李人様には必要のない人間なのだ…と…。
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