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それが運命の恋ならば
第7章 その薔薇の名前は
振袖は大輪の花薔薇が見事に描かれた華やかなものであった。
泰彦の凪子への深い愛情が手に取るように感じられる逸品だった。

凪子に着付けをしながら、律は立て板に水の如く、高遠千晴なる人物について語り始めた。

「千晴様は旦那様の一番お近い甥ご様に当たられます。
お年は三十三歳になられます。
高遠ご本家にお世継ぎが生まれない場合の後継者順位としましては、第一位に当たられるお方でございます。
ですので、旦那様はことのほか千晴様にお眼を掛けていらっしゃいます。
…まあ、そのような堅苦しいことより何より…千晴様は何度拝見してもため息がでるようなお美しく煌々しいご容姿で…。
立ち居振る舞いも優雅で気品溢れ、ご趣味も幅広くお優しいお人柄…。
もちろんおつむもご聡明で、星南学院大学の教授をされています」

…それなのに…。

律は背後から凪子の帯をふくら雀に締めながら、内緒の話をするようにそっと囁いた。

「…まだ、独身でいらっしゃいますのよ…」
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