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それが運命の恋ならば
第7章 その薔薇の名前は
「…そんな…私は…」
美麗な西洋絵画から抜け出してきたような美貌の青年に見つめられ、凪子はどきどきする胸を抑えるので精一杯だ。
李人や禅とはまた異なる…どこか胸が甘く、シャンパンの泡のように浮き立つような感情を覚えるのだ。

「お揶揄いにならないでください。
…千晴様のようにお美しい方に、そんな風に言われたらどうしたら良いか…」
「本当ですよ。
私は嘘は付きません」
快活に笑う。
笑い方には全く嫌味がない。

…ひとつ、伺っても良いですか?
千晴はさりげなく切り出した。

「…はい…」

「…まだ、ご主人だった方を愛していらっしゃるのですね?」
おずおずと貌を上げた凪子に、優しく尋ねる。

「…っ…」
息を呑み、暫し押し黙る。
やがて言葉を選びながら、凪子は口を開いた。

「…はい。愛しています。
李人様は…あの方は…私に生きる希望を与えてくださった方でしたから…」
あの暗鬱な永遠に続くかのような…息苦しい檻のような尼寺から救い出してくれた。
空と海がきらきらと煌めく明るい場所へ、導いてくれた。
…たとえ、それが復讐のための手段だったとしても…。

「酷い仕打ちをされても?
結果的に貴女を捨てたのに?」
美しい琥珀色の瞳が、きらりと光った。
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