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それが運命の恋ならば
第7章 その薔薇の名前は
つまり、千晴は凪子に惹かれたのだと思う。
…その類い稀なる美貌に。
優美で清楚な…どこか浮世離れした神聖な美しさに。
そして、彼女の醸しだす儚さと寂しさと…ひんやりとした男心を刺激する薫り立つような艶やかさに…。

こんな気持ちになったのは、初めてであった。
…少なくとも、初恋のかのひと以来であった。

今、こうして間近に向かい合うと、その思いは一層強くなったのだ。


…潤んだ大きな黒い瞳が、哀しげに…けれど真っ直ぐに千晴を見つめていた。
その眼差しに、千晴は凪子のひたむきな愛を、まざまざと感じた。

「…申し訳ありません。
意地悪なことを申しました」
千晴は先の発言を率直に詫びて、頭を下げた。
そうして、優しく微笑んだ。

「さあ、スコーンを召し上がれ。
うちの料理長の自慢の逸品なのですよ。
その可愛らしいほっぺが落ちないように気をつけて」
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