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それが運命の恋ならば
第7章 その薔薇の名前は
「どうだったかね?
千晴の印象は。
随分と話が弾んだようだね。
七重が知らせてくれたよ。
あんなに愉しげな千晴を久しぶりに見たと」
凪子の帰りを待ち構えていた泰彦は、貌を見るなりそう尋ねた。

凪子は少し困惑したように泰彦に抗議した。
「…お父様…。困ります。
お見合いだなんて…。
私はどなたとも結婚するつもりはないのですから…」

泰彦は陽気に笑った。
「いいじゃないか。
友だちが出来たと思えば。
千晴は良い青年だよ。
あの通り、芸術品のような麗しい容姿に賢い頭脳。
性格も明るく優しい。
友人も多く社交的だ。
大学での授業も評判で人気の教員らしい。
…初恋を拗らせすぎて、今まで独身なのだがね」

そう言えば、千晴の想い人の話は聞けなかった。

「…千晴様も、きっとその方を忘れられないのですわ…」
…私と同じだわ…。
言葉を選びながらそう答える。

「…確かに紫織さんは美しく聡明で優雅で素晴らしい女性だ。
…けれど、人妻だ。
しかも千晴の遠縁の…つまり一族の者の妻だ。
思い続けていても叶う恋ではない。
千晴もそろそろ、踏ん切りを付けるべきなのだ」
泰彦はきっぱりと告げた。
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