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それが運命の恋ならば
第7章 その薔薇の名前は
「…けれど、私も…」
忘れられないのです…
あの方が…。

苦しい胸のうちを口にする前に、泰彦が凪子の手を優しく握りしめた。
その仕草は、凪子の想いを封じ込めるかのようだった。

「…もう忘れなさい。
それが凪子と李人くんのためだ」
「お父様…。でも…」

凪子の手が強く握りしめられた。
「お前たちはもう離婚したのだ。
他人同士なのだよ。
凪子はまだ若い。
人生は始まったばかりなのだ。
新たな出会いに眼を向けてみなさい」

「お父様…」
泰彦の手が、優しく凪子の白くなめらかな頰を撫でた。

「…千晴からさっき電話があった。
来週、また凪子を家に招きたいそうだ」
…それから…
と、愉しげに続けた。

「…凪子さんに恋しそうです…と、照れたように言っていたよ」
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