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それが運命の恋ならば
第7章 その薔薇の名前は
…千晴の庭園の奥にある温室は、個人宅のものとは思えぬほど大規模であり、室内も実に圧巻であった。

英国にあるキューガーデンの温室を模したというクリスタルな外観、見事な蓮の池、そしてやはり色とりどりの華やかな薔薇の花…。
その色彩と薫りはどこか現実離れしているほどに美しく絵画的だ。

思わず見惚れていると、背後から静かに声が掛かった。
「…いかがですか?
父がキューガーデンのチーフスタッフを招致して作り上げた温室なのです。
若い頃、スコットランドのマナーハウスに住んでいた祖母の意向でね。
…祖母は英国好みのひとで、イングリッシュガーデンに拘りを持っていました。
この屋敷の庭園は全て祖母の指示により作られたものなのですよ。
…どうやら、祖母にはスコットランド時代に甘いラブアフェアの想い出があったようです」

凪子は振り返る。
「…ラブアフェア…?」

温室の入り口、すらりとした長躯の千晴が佇んでいた。
今日は如何にも仕立てが上等そうな黒に近い紺のスーツ姿だ。
…大学から帰宅したばかりなのだろう。

凪子の姿を見つめ、彼は眩しげに琥珀色の眼を細めた。

「…今日の凪子さんも格別にお美しい…」
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