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それが運命の恋ならば
第7章 その薔薇の名前は
千晴はゆっくり歩み寄り、美しい瞳を輝かせた。
「そのドレスもよくお似合いだ」
凪子は恥じらうように俯いた。
「…そんな…」


…凪子が身に纏っているのは、初夏らしい白地にライラック色の透し模様のワンピースだ。
オーガンジーのそれは、うっすらと素肌が透けるので凪子は躊躇したのだが家政婦の律は
「凪子様はお若くお美しいのですから、これくらい大胆なものをお召しあそばせ」
と譲らなかった。

髪は華やかにカールされ、アメジストの髪飾りをつけている。
家政婦の律が腕によりをかけて支度をしてくれたのだ。

律は凪子が千晴の屋敷に行くと聴くなり、俄然生き生きとした。
「千晴様は凪子お嬢様にすっかりお心を奪われてしまわれたそうですね」
凪子の髪をセットしながら、楽しげに囁いた。

「七重さんから伺いましたわ。
…千晴様のあんなに浮き浮きしたご様子は久方ぶりに拝見すると…」
家政婦同士、仲が良いのだろう。

凪子は困ったように瞬きをする。
「そんなこと、ないでしょう。
…千晴様にはお好きな方がいらっしゃるのだし…」

律が細い眉を跳ね上げた。
「紫織様ですか?
…あのお方はいけませんわ」
にべもない口調だった。
「なぜ?
ご結婚されているからですか?」

凪子の菫色のサッシュを締め直し、律はため息混じりに答えた。

「…紫織様はぞっとするほどお美しいけれど、殿方のお心を誑かす魔女のようなお方だからですよ」
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