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それが運命の恋ならば
第8章 その薔薇の名前は 〜千晴の告白〜
「初めまして、千晴様。
北川紫織と申します」
嫋やかに膝を折って挨拶をするその美しいひとから、千晴は眼を離すことができなかった。
…似ている…。
いや、七重が言うように生き写しだ…。
五年前に亡くなった母様に…そっくりだ…。
…もしかして…本人なのではないか…。
そんなあり得ない疑念すら湧き起こる。
千晴は驚きのあまり、声も出なかった。
「千晴。北川紫織さんだ。
僕たちは今月末に結婚するんだ。
…こちらのチャペルで式を挙げさせてもらうから、君に紹介をしたくてね」
普段物静かな政彦にしては珍しく多弁である。
やや照れたように…そして如何にも愛おしげに傍らの婚約者を見つめた。
…この美しくも魅惑的な婚約者が自慢でならない様子が透けて見えた。
…紫織は長く濃い睫毛をゆっくりと瞬き、薔薇の花が解びるかのように千晴に微笑んだ。
「…お美しいご当主様ですわね…。
こちらが気後れしてしまいますわ…」
…その妖艶な笑みは、薫り立つように千晴に絡み付いた。
その瞬間、千晴は甘やかな恋の深い沼に堕ちたのだ。
北川紫織と申します」
嫋やかに膝を折って挨拶をするその美しいひとから、千晴は眼を離すことができなかった。
…似ている…。
いや、七重が言うように生き写しだ…。
五年前に亡くなった母様に…そっくりだ…。
…もしかして…本人なのではないか…。
そんなあり得ない疑念すら湧き起こる。
千晴は驚きのあまり、声も出なかった。
「千晴。北川紫織さんだ。
僕たちは今月末に結婚するんだ。
…こちらのチャペルで式を挙げさせてもらうから、君に紹介をしたくてね」
普段物静かな政彦にしては珍しく多弁である。
やや照れたように…そして如何にも愛おしげに傍らの婚約者を見つめた。
…この美しくも魅惑的な婚約者が自慢でならない様子が透けて見えた。
…紫織は長く濃い睫毛をゆっくりと瞬き、薔薇の花が解びるかのように千晴に微笑んだ。
「…お美しいご当主様ですわね…。
こちらが気後れしてしまいますわ…」
…その妖艶な笑みは、薫り立つように千晴に絡み付いた。
その瞬間、千晴は甘やかな恋の深い沼に堕ちたのだ。