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それが運命の恋ならば
第8章 その薔薇の名前は 〜千晴の告白〜
「…落ち着いた?」
籐のベンチに並んで腰掛け、紫織が白いレースのハンカチを手渡す。

千晴は気不味さを隠すように仏頂面でハンカチを受け取り、わざと音を立てて鼻をかんだ。

「…別に、取り乱していませんから」
紫織はくすくす笑った。
その笑い声は如何にも温かかった。
「いいじゃない。泣いたって。
貴方はまだ子どもなんだから」
その口調はすっかり打ち解けた同級生のようだ。
距離感は一気に縮まり、千晴はわざと拗ねたように口を尖らせた。
「子どもじゃないです。もう14歳です」
「子どもだわ。私より10歳も年下だもの」
…へえ…。紫織さんは24歳なのか…と思う。
24歳…。
まだ充分に若いけれど、中学生の千晴には手が届かないほどに大人に思える。

…でも、そんなことはどうでもいい…。
今は、紫織と少しでも長く一緒にいたかった。

千晴はぽつりぽつりと語り始める。
「…母は、昔から身体が弱くて…入退院を繰り返していました。
だから、僕の記憶の母は、いつも病院のベッドにいるか、屋敷の寝室にいるかのどちらかでした…。
…父はそんな母に飽き足らずに、若い愛人を作って家を出てしまいました。
…まあ、父は元々婿養子でしたから、この家に何の未練はなかったのでしょう。
今はタヒチに住んでいます。
とんだゴーギャンだ」

「…そう…」
紫織は静かに相槌を打った。
同情でも憐れみの色でもない、ただ千晴に寄り添うだけの穏やかな声だ。

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