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それが運命の恋ならば
第1章 出逢い
「…では、李人様。
貴方のことを聴かせて下さい」

凪子は真っ直ぐに見上げた。

…眠りにつくまでの間、李人の話を聴きたかった。

「私の話を…?」
李人が驚いたように眼を見張った。

「…はい。
私、李人様のことをたくさん知りたいです」
…そう。
このひとのことをたくさん知りたいのだ。
このひとは夫になるひとだから。

…そして…

ふっと、その黒く美しい瞳が楽しげな色に輝いた。

「たとえば?」

「…好きなものとか…苦手なものとか…ご趣味とか…。
なんでも…李人様のことならなんでも…!」

…なんでも知りたい。

「…なんでも…お話してください…」

…私が、初めて恋したひとだから…。

李人は凪子を腕枕したまま、温かな笑みを浮かべた。

「…そうですね…。
食べ物に好き嫌いはないですよ。
趣味は乗馬と水泳とテニスと登山と…意外かも知れませんがアウトドア派です。
でも、読書や音楽鑑賞や観劇も好きです。
本は乱読派です。
母屋には書庫があるので、凪子さんもご自由にどうぞ。
音楽はクラシックからロックまで何でも聴きます。
舞台も歌舞伎や現代劇、オペラ、バレエ…。
生の舞台芸術が好きなんです。
凪子さんは?」
「…私は何も…。
恥ずかしいくらい無趣味です。
…尼寺では、趣味を持つ余裕も時間もなくて…。
…私、本当に何も知らないのです」

…趣味など許される雰囲気ではなかった。
ひたすら庵主や寺の手伝いに明け暮れていた。

…学校もろくに出ていないし、趣味も知識もなくて…李人様に釣り合わないわ…。
今更ながらに、肩身が狭い気持ちになる。

「でも貴女のお茶の作法は優雅で美しかった…。
あんなに清く美しく自然な所作でお茶を点てるひとを、私は初めて見ました。
…自信を持って良いと思いますよ」
真摯な眼差しで告げられた。

「…李人様…」
胸が一杯になり、涙が溢れそうになる。


「…今度一緒に馬に乗りましょう。
馬場が近くになるのです。 
男の桃馬もああ見えて馬術のセンスだけはあるのですよ。
…持ち馬も二頭いましてね。
馬は可愛いですよ。
私が教えます」
いたずらっぽく微笑まれ、凪子は大きく頷いた。

「…はい…!
ぜひ、教えてください…!」

…幸せだわ…。

生まれて初めて、恋したひとと、自分の居場所を持った。

凪子はしみじみと喜びを噛み締めるのだ。





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